2011年4月17日日曜日

岩井國臣著「桃源雲情」を読んで


2011年4月11日の記事で、岩井國臣著「桃源雲情」の概要を紹介しました。
この本は岩井國臣先生が建設省中国地方建設局長時代に体験されたことを素材にして、地域づくりの哲学の必要性やその内容について論じています。

ここでは、この本を私が再読して、興味を持ち、あるいは参考になったフレーズを抜粋しました。抜粋は著者の基本的な考えのみとし、具体的エピソードは全て省きました。
また、引用図書や参考図書のうち、私が興味を持ち自分の読書予定リストに入れたものをピックアップしました。

1私が興味を持ち、参考となったフレーズ
【 】の小見出しは私が作成しました。

【文明の原理を感得し、政治、経済、行政のあり方を考える】
序にかえて
 カオスからコスモスへ
(3)実践からのアプローチ
「(前略)これからあるべきコスモスというものは、国づくり、地域づくり、川づくりにも当てはまるものでなければならない。逆に、これからあるべきコスモスというものを考えていくとすれば、私などが考えている望ましい国づくりのあり方、地域づくりのあり方、川づくりのあり方をも包含したものでなければならないだろう。ところがこれからあるべきコスモス(文明の原理・秩序)が明らかでない。哲学者が怠けているからだ。だとすれば、当面は、政治、経済、行政それぞれの立場、これからあるべきコスモス(文明の原理)を直感にもとづいて感得し、それによって政治、経済、行政のあり方を考えるしか方策がないではないか。所詮、我々は直感でしか物事はできないのだが。」

【「共生と循環」の思想があるべき文明の原理を創り出す】
序にかえて
 カオスからコスモスへ
(4)遥かなる想い
「大袈裟に言えば、この小著を世に問うてみようと思いたった動機は、この日本の自負と責務を説かれた刺激的で魅力的な先生(※)の言葉である。『共生と循環』の思想がこれからあるべき文明の原理(コスモス)を創り出すのではないかと直感しながら……。」
※梅原猛先生(引用者注)

【歴史を生きる】
中国地方との出会い
「中村雄二郎先生が言われるように、我々は、身体で生きるのではなく、身体を生きるのだ。それと同じように、我々は、歴史に生きるのではなく、歴史を生きるのである。そのように、歴史というものは、地域の風土に関係し、我々の意識に関係しているので、歴史を抜きにして地域を理解することはできないし、地域の人々を理解することもできない。地域や地域の人々を理解することができなければ、真のコミュニケーションはできないし、地域づくりも覚束ないであろう。敷衍して言えば、このことは国際的にも同じことではないかと思う。」

【交流の哲学的意味】
中国地方との出会い
「交流の哲学的な意味は、既存の自分を壊して新たな自分を作り出す、或いは既存のものを壊してより価値あるものを作り出すことにあるのだそうだ。1+1は3の世界、それが交流の世界だ。」

【国家優先、経済優先の国土構造の根本的是正】
中国地方との出会い
「本書の上梓に際して想うのは、わが国が近代化の過程で進めてきた国家優先、経済優先の国土構造そのものを根本的に是正し、地方の盆地などに沈澱している深層文化を再び生き返らせたい想いと、世界のネオ・コスモス(新秩序)に生きる人間の生きざまを暗喩する哲学とそれに連なる社会思想(多分、自然・文化・コミュニケーションをキーワードとする共生思想)をカオスの世界に向けて発信できる地域社会の構築である。」

【ロマンある地域づくり】
人と地域と国を繋ぐ
「ロマンある地域づくりについて、あらためて定義しておきたいといます。『ロマンある地域づくり』とは、その地域の自然的特性、歴史・文化的特性にもとづき、人の感受性の深層部分を震わせるよう気配りのされた個性ある地域づくりであって、それは、本質的に連携、交流、コミュニケーション等、共生の思想を前提にしている。このようになろうかと思います。」

【第三の文明】
饒舌の平和から明るい平和都市ヘ
「反戦運動や反核運動そういったレベルでの平和というのではなくて、もっと原点に返っての平和、それが哲学の道研究会なんです。第一回目にお呼びした梅原猛さんは、これからの世界というのは、力の文明ではもうやっていけない。西洋の文明というのは、力の文明で成り立っているわけですけれども、そういうものではもうやっていけないので第三の文明というものをつくらなければいけない。日本というのは、西洋文明の取り入れに成功して、しかも古い日本と東洋の伝統文化が残っている。そういう西洋文明と東洋文明の渾然一体とした中から、第三の文明が出てくるのではないか。それには、日本が大きな役割を果たすのではないか。『ベき論』ではなくて、たぶん果たすのではないか、こういうことを言われるわけです。」

【リージョナルコンプレックス】
地域づくりの哲学とは何か
「地域づくりは人づつくりとよく言われるが、地域づくりに取り組むサークルないし団体が生き生きしていなければならない。数名のサークルから大きな団体までいろいろな組織があって、いきいきと独自の活動をしている。そして、それらの組織が何かある共通のテーマで結ばれている、そういう地域社会は生き生きしている。坂本慶一氏(福井県立大学学長)は、リージョナルコンプレックス(regional complex)と呼んでいるが、今後、わが国は、そういう地域社会の実現を目指さなければならない。それが聞かれた地域社会であり、共生、交流、連携(ちなみに、共生、交流、連携は同根の言葉であるがこの順序で概念が広い)をキーワードとする共生社会である。」

【共生と循環の原理】
地域づくりの哲学とは何か
「私のもっとも尊敬する梅原猛先生は、『これまでの科学技術は自然を征服するための科学技術であったが、これからの科学技術は自然と共生し、自然を尊敬するための科学技術、共生と循環の原理に基づく科学技術でなければならない』と仰言っておられる。」

【川づくり】
地域づくりの哲学とは何か
「そして今、私は河川環境の三大要素、自然生態系と社会系と文化系、それらを考えながらこれからの川づくりを進めていきたいと考えている。そして、そういったこれからの川づくりは、さまざまな交流活動あるいは連携によって進められる。言うなれば、梅原猛先生の言われる「循環と共生社会」の一つの姿を夢見ているわけだが、予感としては、いま考えているような動きがわが国の社会に広く定着していけば、多分、そのことが梅原猛先生の言われる第三の文明というものをも作り出していくことになるであろう、そんなふうにも感じている。」

【コミュニケーションシステムの必要性】
あとがき
「しかし今、確信して言えることは、コミュニケーションシステムの必要性だ。それもオフライン、オンライン共にである。コミュニケーションシステムのないところに二十一世紀型の生活はない。こう言い切れるのも、交流活充運動を通じて多くのことを学んだお陰だ。」

2私が興味を持った引用・参考図書
哲学の現在 中村雄二郎 岩波新書
「森の思想」が人類を救う 梅原猛 小学館
地域の思想 増田四郎 筑摩書房
「小盆地宇宙と日本文化」米山俊直 岩波書店
現代文明ふたつの源流 中尾佐助 朝日新聞社
稲作文化と日本人 玉城哲 現代評論社

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