2011年9月20日火曜日

利子の厳禁

緑の資本論4 利子の厳禁

この記事では、中沢新一著「緑の資本論-イスラームのために」を扱っています。
以下の目次に従って、順次その要約と感想を記事として掲載しています。

緑の資本論-イスラームのために 目次
一 一神教をめぐる認知論的レッスン
1節【魔術的思考の時代】
2節【一神教の成立】
二 利子(利潤)を否定するイスラーム
1節【象徴界と現実界の一致】
2節【利子の厳禁】
3節【キリスト教のストッパー解除】
三 タウヒード貨幣論
1節【資本主義とイスラーム経済の差異】
2節【タウヒードの思考】
四 聖霊は増殖する
五 マルクスの「聖霊」
1節【「三位一体」のドグマ】
2節【一神教純正ドグマからの逸脱】
3節【クリスマスとラマダーン】
エピローグ スークにて

(*印で区分されているところを節とし、小見出しは当方で付けました。)

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二 利子(利潤)を否定するイスラーム
2節【利子の厳禁】
ア 要約

●イスラームにとって貨幣は記号であり、象徴界と現実界を直接性において結ぶ蝶番でなければならない。貨幣は、物の代用でなければならない。売り手と買い手の間に決定的な区別は発生しないはずである。

●実際は貨幣は物に対してシニフィアン[記号表現]としての、つまりは物に対する表現者としての位置をすぐさま獲得する

●購買を売却から「遅延」させ、「物の一般的代用物(つまり流動的な自由シニフィアン)」としての貨幣をより多く獲得するようになる。

●これにより、経済的強者のみが貨幣を蓄財し、生産活動が麻痺する。

●イスラームは貨幣の魔力に抗して、想像界に対する象徴界の絶対的な優位を守るために、一種の「分子革命」をした。それは「利子の禁止」である。

●一神教的思考では、貨幣が自己増殖を起こし、増殖分が「利子」として貸し手に入ることはあってはならない。

●イスラームでは「無利子銀行」の試みをはじめ、一神教的記号論が厳密に適用されなければならないと考えられた。

イ 感想
●一神教的思考から貨幣について考察するというテーマを中沢新一の文章で初めて接し、私にとって新鮮です。

●イスラームの世界で、無利子銀行が現実にあることを、この文章ではじめて知りました。

●WEBで調べると、1950年代のパキスタンで最初に生まれ、ついでエジプトに現れ、1970年代以降潤沢なオイルマネーで世界に200以上作られているとのことです。

●無利子銀行のメインの活動は事業家に対する出資で、もともとハイリスク、ハイリターンなキャラバン交易活動に対する出資に由来するようです。

●無利子銀行が現在の世界で一定の規模を成し、成長を遂げている現実にも興味が向かっています。

(つづく)

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